センター活動

研究紹介

大阪市立大学人工光合成研究センターは、人工光合成社会の実現に向け、光合成・人工光合成研究 を進める教員が基礎研究から応用研究まで幅広い研究活動を行っています。 これまでの研究技術開発の成果の中から、代表的なものをまとめて紹介します。

複合先端研究機構 教授・天尾 豊
複合先端研究機構 教授・吉田朋子
複合先端研究機構 教授・神谷 信夫
複合先端研究機構 准教授・藤井 律子
複合先端研究機構 特任教授・南後 守
複合先端研究機構 特任准教授・川上 恵典
複合先端研究機構 特任助教・池山 秀作

太陽光駆動型バイオマスー水素製造技術開発に成功
(複合先端研究機構 教授・天尾 豊)

未利用バイオマスを原料とし、光合成色素類似分子およびバイオマス分解酵素、水素生産酵素などの触媒反応を利用した水素製造技術の構築。今後、ソーラー水素生成パネルを製作し、小型燃料電池への水素燃料供給源へ展開を進めます。

※本研究成果は、COI-T「次世代水素エネルギー社会の実現」拠点事業における成果。欧州水素国際会議で講演発表、International Journal of Hydrogen Energy誌に論文発表。

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エタノール燃料生成のための人工光合成技術
(複合先端研究機構 教授・天尾 豊)

燃料としての付加価値が高いエタノールを太陽光エネルギーを利用し、二酸化炭素から生成可能な人工光合成系の構築を進めます。現在は酢酸からエタノールを生成可能な人工光合成系が構築できており、最終的には天然ガスと二酸化炭素から酢酸を合成し、その後人工光合成系を使ってエタノール燃料に変換できるシステムを目指します(本研究はマツダ株式会社との共同研究成果です)

※本研究成果は、Applied Catalysis B: Environmental誌に論文発表、「人工光合成によるエタノールの生産方法」として特許申請中(出願番号 2011-259102 公開番号 2013-110996)

光照射によるエタノール生成

光照射に伴うエタノール生成の経時変化

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二酸化炭素を燃料に変換する酵素触媒に関する研究
(複合先端研究機構 教授・天尾 豊)

二酸化炭素を燃料に変換するための人工光合成系を構築するためには、二酸化炭素を有機分子に変換する反応を触媒する材料開発が必須です。二酸化炭素をギ酸に変換する反応を触媒する酵素“ギ酸脱水素酵素”に着目し、人工補酵素を分子設計・合成し酵素触媒機能向上につながる研究を進めています。

※本研究成果は、Chemistry Letters誌に論文発表、「酸化還元酵素反応の制御及びその応用」として特許申請中 (出願番号 特願2012-139887)

人工補酵素メチルビオローゲン

構造が簡単な分子を使って反応速度が約6倍に向上!
→更なる反応速度の向上を目指す

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太陽電池・CO2還元・燃料生成機能を持つバイオデバイスに関する研究
(複合先端研究機構 教授・天尾 豊)

濃緑色単細胞微細藻類であるスピルリナの水中における効率的な酸素発生型光合成機能に着目し、スピルリナ由来の光合成膜を固定した電極を用いて、水と二酸化炭素を作動媒体とし、太陽光エネルギーで発電しながら二酸化炭素を削減します。さらに低炭素燃料の代表でもあるメタノールを同時に生産できる革新的な光電変換系の構築を目指します。

※本研究成果は、戦略的創造研究推進事業さきがけ「藻類由来光合成器官の電極デバイス化とバイオ燃料変換系への展開」における成果。第20回太陽エネルギーの利用と貯蔵に関する国際会議(IPS-20)、エネルギー及び材料に関する国際会議(EMR2015)微細藻類国際会議(Algal 2015)で講演発表。

光のオン・オフによる 電流変化

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植物や藻類が作り出す,人が生きていく上で必須な酸素の発生機構の解明
(複合先端研究機構 教授・神谷 信夫) (複合先端研究機構 特任准教授・川上 恵典)

人が生きていく上で必須な「衣食住」の大部分は,植物や藻類の作りだす物質によって支えられています。この研究は,植物や藻類の酸素発生機構を理解するとともに,化石燃料や原子力に代わる代替エネルギー開発のために進められています。

※本研究の成果は,2010年の第15回国際光合成会議(北京にて開催)で発表され(発表:沈建仁教授、岡山大学),翌年2011年に,英国科学誌Natureに論文発表されました。さらに,2011年の米国Science誌の世界10大ニュースの一つに選ばれました。

植物・藻類内で酸素を発生する蛋白質の結晶

酸素を発生する中心構造。
紫色:マンガン原子, 黄色:カルシウム原子,
赤色:酸素原子, 橙色:水分子。
酸素発生反応の基質となる水分子は,
マンガン原子とカルシウム原子に結合している。

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可視光応答型光触媒中の活性サイトの同定と可視化に成功
(複合先端研究機構 教授・吉田朋子)

水からの水素生成や環境中有害物質の分解を可能とする光触媒中の活性サイトの化学状態を明らかにし、その触媒中での分布をマッピングすることに成功しました。今後は、放射光分光や電子顕微鏡技術を融合した新しい分析法も構築しながら、人工光合成を実現する固体光触媒の設計開発を進めます。

※本研究成果は、科学研究費基盤研究B「超高活性触媒設計のための触媒活性種特異的サイト選択的構造・電子状態解析の実現」における成果。触媒調製に関する国際会議PREPA11で発表、Surface and Interface Analysis誌を論文発表。

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アスタキサンチン蓄積レタスの光合成機能の解明
(複合先端研究機構 准教授・藤井 律子)

天然物の中で極めて高い抗酸化作用を示すアスタキサンチンを高い含有率で蓄積するように遺伝子改変したレタスは、通常の光機能を担うカロテノイド色素をほとんど欠損しながらも、光合成的に生育します。我々は、生育時の光合成応答と合わせて、これらの外来カロテノイドがどこに存在するのかを決定し、この遺伝子改変レタスの光合成機能を解明しようとしています。この研究成果は、既に化粧品や機能性食品分野で市場が拡大しつつあるアスタキサンチンの安定生産の選択肢を増やし、健康寿命の延伸に寄与すると考えられます。(本研究は石川県立大学の三沢典彦教授、京都大学の伊福健太郎助教との共同研究です。)

※本研究は、学内戦略的研究(萌芽)「遺伝子改変によりアスタキサンチンを生産するレタスの新規光合成機能の解明」の成果。カロテノイド国際学会シンポジウムで講演発表、論文準備中。

葉緑体遺伝子改変レタス

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褐藻類の光合成アンテナに結合した色素の構造と機能
(複合先端研究機構 准教授・藤井 律子)

太陽光の利用には、集光メカニズムが重要です。緑色植物は太陽光の最もエネルギーの大きい緑色光をあまり効率よく利用できません。しかし水深5m以下では緑色の弱い光しか得られないため、海洋性光合成生物には、緑色光を効率よく光合成に利用する集光性アンテナタンパク質を持つものがあります。我々は、こういった特殊な海洋性光合成アンテナタンパク質に結合するカロテノイド、クロロフィルといった光合成色素の構造と集光機能を解明しようとしています。私は、褐藻類の光合成アンテナFCPに結合するフコキサンチンが、ゆでると不可逆的に遊離することに着目し、FCP内においてフコキサンチンが集積している構造が集光に重要であると着想しました。これよりフコキサンチンの集積で緑色光の集光を再現しようとしています。フコキサンチンは多孔質シリカに吸着させることにより画期的に耐久性が得られます。この吸着を制御することにより、フコキサンチンの集積に依存する電子励起状態の変化を観測する事が出来ました。

※本研究は、戦略的創造研究推進事業さきがけ「褐藻類の光合成アンテナに結合した色素の構造と機能」の成果。人工光合成国際会議でポスター発表を行い、J. Photochem. Photobiol.に論文発表した。





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深所型緑藻の光合成アンテナに結合した色素の構造と機能
(複合先端研究機構 准教授・藤井 律子)

海の潮間帯に生息する深所型緑藻ミルは、緑色の光を光合成に利用できる光合成アンテナSCPを持っています。我々は、糸状体でこのミルを培養し、SCPを精製して色素組成を精査することにより、このSCPは、通常の緑藻でルテインというカロテノイドである部分がシフォナキサンチンというカルボニルカロテノイドに変わっているだけであるという事を明らかにしました。現在は、深所型緑藻である海松(ミル)を糸状体で培養し、これから光合成アンテナを精製して、その生育時の光環境に応答する色素組成とX線結晶構造解析を目指した結晶化を行っています。(本研究は大阪大学蛋白質研究所の栗栖源嗣教授との共同研究です。)

※本研究は、株式会社サウスプロダクトとの共同研究であるNEDO(H23.3~H24.2)の「海洋藻類を用いたカロテノイド及び色素結合型タンパク質の大量生産技術の開発」の成果を発展させたものである。Photosynth. Res.に論文発表。

海松(ミル)糸状体

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海洋性光合成色素クロロフィルcの光励起状態の解明
(複合先端研究機構 准教授・藤井 律子)

海洋性光合成生物には、クロロフィルcというポルフィリン環とカルボン酸が共役系でつながった構造を持つ特徴的な集光性色素が見られますが、その物性の研究はあまり進んでいません。その理由として、含有率が低い事、有機酸のため溶解性が低く、分離する担体と強く相互作用するため、精製が困難な事が挙げられます。そこで我々は、高速向流クロマトグラフィー(HSCCC)を用いて担体を用いずにクロロフィルcを集積する事に成功しました。さらに、溶液のpH変化に応答して蛍光の量子収率が20%程変化する事を発見しました。今後は、分離手法の開発とともに、励起状態の物性を明らかにして行きたいと考えています。

※本研究は、科学研究費補助金若手研究(A)「海洋性光合成色素クロロフィルcの生体及び色素増感太陽電池における光励起状態の解明」の成果。「クロロフィルcおよび/またはキサントフィルを分離精製する方法」、「pH指示薬」として特許申請。

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人工光合成アンテナとナノデバイスへの展開 ―光電変換機能をもつバイオセルの開発―
(複合先端研究機構 特任教授・南後 守)

光合成細菌の光捕集系(アンテナ)タンパク質色素複合体(LH1-RC)に着目して、その複合体の再構成および自己組織化を行い, アンテナ機能をもつ色素複合体の構築原理の解明とそれのデバイス化への展開を行っています。最近、アンテナ色素複合体を金電極基板上に組織化し、高効率な光電変換機能をもつ色素複合体の構築とそれらの機能をもつバイオセルの開発に成功しました。これらの研究の進展により、社会的に要請の強い高効率な光エネルギー変換機能をもつ人工光合成アンテナの構築が期待できます。

本研究はNEDO国際共同基礎研究およびJST戦略的国際共同プロジェクトならびに戦略的創造研究推進事業(Crest)に参画して関連論文を公表しています。

C末およびN末 His-tag 化LH1-RCの金電極上への組織化と その光電変換応答機能および単一分子の導電性AFM測定

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植物の環境適応を実現する過渡的超分子複合体の構造基盤(受託研究)
(複合先端研究機構 特任准教授・川上 恵典)

真夏の直射日光など,植物や藻類は日々過酷な環境条件にさらされています。この時,植物や藻類の細胞内では光を受容するアンテナ蛋白質の解離・集合が行われていますが,これらの構造変化と機能の相関は実は詳しく理解されていません。この研究は,環境変動による植物や藻類の複雑な光化学反応を理解するために進められています。

本研究は,CREST「ライフサイエンスの革新を目指した構造生命科学と先端的基盤技術(研究総括(田中啓二, 東京都医学総合研究所), 研究代表者(栗栖源嗣, 大阪大学蛋白質研究所))によって進められています。

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CO2の資源化を可能にするバイオ触媒利用技術の開発
(複合先端研究機構 特任助教・池山 秀作)

CO2を資源として有用な有機分子に変換する人工光合成系を構築するためには、CO2を有機分子に変換する反応を触媒する材料開発が不可欠です。CO2をギ酸に変換する反応のバイオ触媒である“ギ酸脱水素酵素”に着目し、人工補酵素の分子設計及び開発による、酵素触媒活性機能の向上を可能にする技術の研究を進めています。

本研究成果は、太陽光エネルギーを用いた物質変換に関する国際会議IPS21で講演発表、ChemCatChem誌に論文発表。

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